小説「とんび」を読んでみました。
読み始めたのはかなり前で途中まで読んで放置していたのですが、最近ふと読みたくなったので再開して読み切りました。
この4月からは新天地での仕事となるので、不安と期待で胸がいっぱいです。
場合によっては家族と離れることになるやもしれません。
そう思うと、家族や仕事、人生についていろいろと考えてしまいます。
そんな時にとんびを思い出したので、読み返してみました。
これが結構面白いというか、人生の辛さや寂しさを紛らわせてくれる、いい作品だなぁと思いました。
小説を読んだあと、Amazonプライムに映画もあったので見ましたけど、これも本当によかった。
子育てしているお父さん、なんか日々寂しさを感じているお父さんにぜひ見てもらいたい作品です。
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とんびのあらすじ
市川安男(ヤスさん)と妻・美佐子の間に産まれた息子のアキラがまだ小さい頃、美佐子は事故で亡くなってしまいます。
広島の備後に住む不器用で頑固な性格のヤスさんが男手ひとつで息子のアキラを育てていく話。
ヤスさんは本当に不器用で言いたいことが言えない、でも譲らない、そんな頑固な性格だけども、皆に慕われる憎めない男。
そんなヤスさんは不器用ながらも息子のアキラに愛情を注ぐ。
男手一つの子育ては山あり谷ありで苦労の連続だけど、素晴らしい親心を持って息子のアキラを立派に育てていく物語。
不器用でも真っ直ぐに生きるヤスさんの様子を想像すると、男として、父親として考えさせられるものがたくさんありました。
子育てや仕事に必死になっている自分と重ね合わせると、とんびは泣きたくなるくらい素晴らしい作品だと思います。
(最後の方はずっとうるうるしながら読んでいました涙)
とんびから子育ての素晴らしさを知る
ここからはとんびの内容というより、それを読んだ感じたことになります。
子供は可愛いのですが、ずっと一緒だと疲れることもあります。
時に子供が理不尽な我儘を言うのでキツく怒ってしまう時もあります。
こういったことが続くとマンネリになり、人生の中でも貴重な子育ての時間を粗末にしてしまいがちです。
子供がパパ、パパと無邪気に自分を求めてくれる可愛らしさは今だけのものだろうに、こんなに素晴らしい時間を粗末に扱うというのは本当に勿体ないことだと自分は思っています。
子供との時間を何気なく過ごしていると、あっという間に思春期を迎え、子供から煙たがられるようになりそう。
いずれ、子供との会話も少なくなり、気付けば子供は巣立っていなくなっている。
子供がいて賑やかだった生活から一転して、夫婦2人きりの静かな日常を迎える。
寂しいんだろうなと。
そんなことを思ってしまうんですよね。
しかし、子育てって難しいですよね。
子供が間違ったことをした時は叱らないといけない。
でも親である自分自身も間違ったことをたくさんしている。
そんなことでは子供に示しがつかないと思うが、間違いをゼロにすることはできない。
そんな自分には親として子供を叱る資格がないと思う時もあるがそれも何か違う。
子供が悪いことをした時は叱りはするものの、何か腑に落ちない。
自分は正しく子育てが出来ているのだろうかといつも悩んでしまいます。
子供には自分よりも良い人生を歩んで欲しいと思うがゆえのことです。
子供が親である自分を超えた時に自分の子育ては正しかったと自信を持って言える。
それを目指しているんですよね。
でも最近はそう思わなくなってきました。
子供が親である自分を超えるとはどんな状態なのか。
金持ちになることではないと思う。
贅沢なんて言い出したらキリがない。
生活は質素でも良いから、お金の不安がなく、何か心地の良さを感じられる人生が幸せなんだと思います。
どうでも良い話ですが、この記事を書いていて「充実」という言葉が何か重苦しく感じると気付きました。
充実した人生というものを想像すると、とてもギラギラしていて暑苦しい。
その言葉の裏には、立派になって人に羨まれる状態というイメージが自分にはあります。
皆、充実した人生を送れるように頑張りましょう!と言われても…という感じ。
そういう押し付けがましい幸せではなく、静かでほんのりと温もりを感じられる心地よさがある人生が幸せかなと、年をとって感じるようになりました。
…話を元に戻しますが、子供には自分より幸せになって欲しいとか立派になって欲しいとか。
それが叶わなければ親の子育てが悪いことになる。
というような考えはやめようと思いました、とんびを読んで。
作品の中ですごく響いたセリフを抜粋します。
子供が出来たアキラにヤスさんが言ったこんなセリフがあります。
「一つだけ言うとく。健介のことも、生まれてくる赤ん坊のことも、幸せにしてやるやら思わんでええど。親はそげん偉うない。ちいとばかり早う生まれて、ちいとばかり背負うものが多い、それだけの違いじゃ。子育てで間違えたことはなんぼでもある。悔やんどることを言いだしたらきりがない。ほいでも、アキラはようまっすぐ育ってくれた。おまえが、自分の力で、まっすぐに育ったんじゃ」
「親が子どもにしてやらんといけんことは、たった一つしかありゃあせんのよ」
「……なに?」
「子どもに寂しい思いをさせるな」
海になれ。
遠い昔、海雲和尚に言われたのだ。
子どもの悲しさを呑み込み、子どもの寂しさを呑み込む、海になれ。
この手の心に響くセリフが作中にたくさん出てくるんですよ。もう涙涙の連続です。
それはさておき、今まで自分は親として立派な存在であるべきだと勝手に言い聞かせてきた。
自分がしっかりしないと…との想いが裏目に出て家庭を良くない雰囲気にしてしまったこともあります。
立派とか幸せとか、そういうことはどうでも良くて、子供が寂しい思いをしないようにしてやるだけで充分なのかもしれない。
それだけで良いというと、どうしても自分を甘やかしているだけと思ってしまいますが、立派だとか何だとか、そんなにいろんなものを求めても大事なことを見失っては仕方がありません。
立派でなければいけない、人より何かが出来ることが偉い、そういった考えは人生に必要なのか。
立派でなくても何も出来なくても、質素でパッとしない生活をしていても、幸せを感じられる心の豊さがあれば良いのだと思います。
幸せとは自分を取り巻く環境や状態のことではなくて、自分が幸せと思えるかどうか、気持ちのコントロールによるものだと思います。
親の独りよがりの子供を立派に育てようなんていう考えは必ずしも正しいわけではなさそうです。
子供には平凡でも良いから、何かこう息苦しい思いをせず日々気持ち良く過ごせる人生を送って欲しいと思います。
もうちょっと自分の気持ちに素直に生きても良いのかなと。
とんびを読んで、そのようなことを思いました。
小説「とんび」の感想まとめ
とんびは人生を必死に生きながら男手一つで子育てをする主人公ヤスさんの話です。
父親として子育てとどう向き合えば良いのかを知るヒントが得られたし、まだ先の長い子育てに心が折れることなくやっていく為のヒントもあったと思ってます。
人生はどんなにきれいごとを言っても、辛いことが大半で、一瞬の幸せが苦労を帳消しにする。
その一瞬のために人は頑張って生きているのだと思います。
お父さん
読んでみ?
泣くぞ!
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